実家の片付け、何から始める?親子で揉めないために知っておきたい「3つのステップ」

どう進める?【実家の片付け】

「実家の片付け」は、単なる荷物の整理ではありません。それは、家族の歴史と向き合い、それぞれの「悲しみの速度」を調整する作業です。 私の家で起きた、ある悲しい行き違いの物語を通して、皆さんが同じ後悔をしないためのヒントをお伝えします。

その「良かれと思って」が、家族の絆にヒビを入れる

「親が亡くなったあと、いつから片付ければいいんだろう?」 「いつまでもそのままにしておけない、と思って提案しただけなのに、親(あるいは親族)に提案すると怒られる……」

実家の片付けを考え始めたとき、多くの人がこうした壁にぶつかります。子世代である私たちは、仕事や生活があり、限られた時間の中で「効率よく」「現実的に」進めようと必死になりますよね。

しかし、その「良かれと思って」という必死さが、時に取り返しのつかない心の溝を作ってしまうことがあるのです。

実は、私の家族もそうでした。良かれと思って動いた父と、それを受け入れられなかった祖母。あの日、私の家で起きた出来事をお話しさせてください。

なぜ「実家の片付け」は喧嘩になるのか?|親子・親族が揉める本当の理由

そもそも、なぜ実家の片付けはこれほどまでに感情がぶつかり合うのでしょうか。

それは、どちらかが冷酷だからでも、思い出を軽視しているからでもありません。根本的な原因は、「悲しみの中で、行動に移せるようになるまでのスピード」が人によって全く違うことにあります。

大切な人を亡くしたショックは皆同じです。しかし、そこから「いつまでも放置はできない」と現実に向き合い、具体的な片付けに動けるようになるまでの時間は、驚くほど個人差があります。

「今すぐ動かなければ」と焦りを感じる人。 「まだ一歩も動けない」と面影に浸りたい人。

お互いに相手を大切に思っている気持ちは同じなのに、この「心の整理にかかる時間のギャップ」を無視して進めてしまうことこそが、家族がバラバラになる最大の原因なのです。

【実録】必死に片付けた父が「情がない」と言われた日

私の祖父は、多発性骨髄腫という病で亡くなりました。 急に体調を崩して入院してから、わずか1週間足らず。

あまりにも突然の別れに、私たちは心の整理が追いつかないまま、慌ただしく葬儀を終えました。祖父は人望の厚い人で、突然の別れに多くの人がその死を惜しみました。

葬儀から1週間ほど経った頃、父が動き出しました。 父は婿養子としてこの家に入り、長年祖父を支えてきた人です。父が手を付けたのは、実家の敷地内にある大きな倉庫でした。

祖父は大工であり、同時にイノシシや鹿を追う現役の猟師でもありました。 倉庫には、大量の罠や猟の道具、そして使い込まれた大工道具がぎっしりと詰まっていました。それらは非常に専門性が高く、家族の誰も引き継ぐことができないものばかり。中には法的に所持が制限される大きなナイフもあり、警察に届け出る必要もありました。

「自分がやるしかない」 父はそう思っていたはずです。私や弟は遠方に住んでおり、この重労働をこなせる体力があるのは、当時、家を守っていた父だけでした。

忌引きで仕事を休んでいる間に、この山のような荷物をなんとかしなければ……。父はせっかちではありましたが、それは強い責任感と行動力の裏返しでもありました。

警察への提出、知人への譲渡、そして処分。父の必死の作業により、倉庫は綺麗に片付きました。

しかし、その様子を静かに見ていた祖母の表情は、晴れやかなものではありませんでした。 祖母は、怒っているとも悲しんでいるともつかない顔でこう言ったのです。

「おじいさんの物が無くなってしまった。何もそんなに急いで捨てなくてもよかった。あの人(父)には情がない。何年も一緒に住んでいたのに、所詮は他人だったのだろうね」

長年連れ添った夫を突然失い、心の準備ができていなかった祖母。倉庫の道具たちは、主を失ってもなお、そこにおじいちゃんが「いる」と感じさせてくれる場所だったのかもしれません。

家族のために現実的な整理を急いだ父。

思い出を奪われたと感じた祖母。

どちらも悪くないはずなのに、結果として「情がない・他人」という、あまりにも悲しい言葉がでてきてしまったのです。

父が仏壇の前で流した涙。本当の「供養」とは何か

「情がない」――。

祖母が放ったその言葉は、家族のために汗を流した父にとって、あまりにも残酷な評価だったかもしれません。

確かに父の行動は、祖母の心の準備を追い越してしまったのでしょう。

しかし、私は知っています。 家族が寝静まった夜、父が一人で仏壇の前に座っていた姿を。

そこには、祖母や母の前では決して見せなかった、父の本当の顔がありました。

父は祖父と酒を酌み交わすように、湯呑みを一つ仏壇に供え、自分もゆっくりと酒を飲みながら、声を殺して泣いていました。

「悲しくない」はずがありません。

婿養子としてこの家に入り、祖父の背中を見て、その生き様を誰よりも尊敬していたのは他ならぬ父でした。父の心だって、本当は張り裂けそうだったはずです。

ただ、そんな感情を押し殺してでも、「その時、自分がやるしかない」と考えたのでしょう。今やらなければ、いつ誰がこの場所を整理するのか。目の前の問題を放っておくことができない、父の真っ直ぐな性分でもありました。

この時、私は確信しました。

実家の片付けにおける本当の問題は「捨てる・捨てない」ではありません。「悲しみの表し方は、人によって、立場によって全く違う」という事実を、お互いが理解できていないことにあるのだと。

父には、家を維持し、後の混乱を最小限に抑えようとする「家族への責任感」がありました。

一方で祖母には、少しでも長く面影に浸り、祖父の気配をそばに置いておきたいという「切実な願い」がありました。

ただ、その「表現の速度」が違っただけで、誰一人として悪くはなかったのです。

実家の片付けで親子が揉めないための「3つのステップ」

私が実体験から学んだ、家族がバラバラにならず、和やかに片付けを進めるための具体的なステップをお伝えします。

ステップ1:「心の準備期間」を共有する

まず、忌引きの数日間ですべてを終わらせようとしないでください。

「いつまでに、どこをやるか」というスケジュールを立てる前に、「今はまだ、物に触るのが辛い時期だよね」という感情の共有を優先します。

「1ヶ月はそのままにして、それから少しずつ相談しよう」と期限を切るだけでも、親世代の安心感は格段に変わります。

ステップ2:「捨てる」を「整理・譲る」と言い換える

「捨てる」という言葉は、非常にネガティブな響きを持っています。

「使わなくなったから捨てる」のではなく、「おじいちゃんの道具を、大切に使ってくれる人に引き継ぐ(譲る)」「これからの家の管理のために、一度きれいに整える」という言葉を選んでください。

祖父の猟師道具も、もしあの時「これは誰かに使ってもらおうか」と会話を重ねていたら、祖母の心のトゲは少し丸くなっていたかもしれません。

ステップ3:第三者(プロ)の力を借りて「感情」と「作業」を切り離す

家族だけで片付けを行うと、どうしても甘えが出てしまい、遠慮して進まなかったり、逆に言葉がキツくなったりします。

そんな時、遺品整理のプロや買取業者などの「第三者」を入れることは、実は非常に有効な手段です。

プロが介在することで、「現実的な作業」を外に切り出すことができます。すると、家族の中に「片付ける人」と「見守る人」という役割の差がなくなり、全員が同じ立ち位置で、おじいちゃんの思い出と向き合うことができるようになります。

もちろん、必ず業者を入れなければいけないわけではありません。家族で話し合いながら進められるなら、それが一番の形です。大切なのは「誰に頼むか」ではなく、「家族が同じ方向を向ける形を選ぶこと」です。

まとめ:亡くなった人が一番に願っていること

実家の片付けは、過去を清算する作業ではありません。残された家族が、これからも仲良く、健やかに生きていくための「未来への準備」です。

祖父がもし生きていたら、自分の道具を巡って父と祖母が悲しい思いをすることを、決して望まなかったはずです。

亡くなった人はいつだって、残された家族が円満であることを一番に祈っています。

私の父や祖母のような思いをする人を、一人でも減らしたい。 そのためには、知識だけでなく、家族の心に寄り添う知恵が必要です。

もし今、あなたが実家の片付けで立ち止まっているのなら、どうか一人で抱え込まないでください。まずは、親御さんの思い出話を聞くことから始めてみませんか。

その一歩が、家族がバラバラにならずに、また前を向いて歩き出すための「大切なはじまり」に繋がるはずです。

実家の片付けは、「気持ち」の問題と「現実」の問題が、必ず別々に現れます。


次の記事では、「自分たちでやるべきか、誰かに頼るべきか」を判断する基準について、もう少し具体的に整理していきます。
実家の片付け、業者に頼むべき?自分たちでやるか迷ったときの判断基準

コメント

タイトルとURLをコピーしました