「終活」という言葉に、少し抵抗を感じる理由
最近、「終活」や「エンディングノート」という言葉をときどき耳にするようになりました。
テレビや雑誌でもたまに特集されていますし、以前よりは一般的な言葉になってきているようです。
ですが、正直なところを言えば、私は最初、この言葉にあまり良い印象を持てませんでした。
「終活・エンディング」
その文字面から受ける印象が、どうしても「人生を終わらせるための準備」のように思えて、どこか寂しくて後ろ向きな響きを感じてしまったからです。
まだ元気で、毎日を普通に生活しているのに、わざわざ自分の「終わり」を想定してノートを広げるなんて、どこか縁起でもない。
そう思うのは、今の生活を大切にしている身としては、ごく自然なことだと私は思います。
ですが、実際に親のことや、自分自身の生活を見つめ直す中で、この言葉の本当の意味は少し違うのではないかと感じるようになりました。
エンディングノートを書くことは、決して「終わりの準備」ではありません。 それは、「今の自分の状況を整理しておくこと」です。 そしてその整理が、結果として、家族を助ける備えになる。
この記事では、エンディングノートがなぜ必要なのか、そしてなぜ「元気な今」書くことに意味があるのかを、私の実体験を交えながらお伝えしていきたいと思います。
終活ノートとの違いは?実はほぼ同じ意味
「エンディングノート」と聞いても、具体的に何を書くものなのか、最初はよくわからない方も多いと思います。
また、「終活ノート」という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。
結論から言うと、エンディングノートと終活ノートは、基本的に同じ意味です。
呼び方が違うだけで、どちらも「自分の情報」や「財産のこと」、「連絡先」や「希望」などをまとめておくためのノートです。
わざわざ「エンディング」なんて言葉を使わなくても、もっとフラットに「自分と家族のための備忘録」と捉えてもいいかもしれません。
具体的には、以下のようなことを書き留めるのが一般的のようです。
- 自分の基本情報
本籍地、マイナンバー、年金番号など - 財産のこと
銀行口座、保険、投資信託、不動産の情報など - 連絡先
親戚や友人、お世話になっている人のリスト - 希望や考え
万が一の時の医療や介護、お葬式の希望など
大切なのは「何を書くか」以上に「なぜ書くか」
ここで重要なのは、項目を埋めるという作業自体ではありません。
それ以上に、「なぜこのノートを記しておくのか」という目的です。
多くの人は、「自分が死んだ後のために」と考えがちですが、それは少し違います。
本当の目的は、「今の自分の状況を整理し、家族が困らないようにしておくこと。」そして同時に、「自分自身が、毎日を安心して過ごすため」でもあります。
「死」を準備するのではなく、
「今」を整える。
そう捉え直すと、このノートは決して後ろ向きなものではなく、これからの人生をより身軽に、安心して続けるための大切なステップなのだと気づかされます。
今は、家族でもわからないことが増えている
デジタル化によって、「見えない情報」が増えた時代
なぜ今、あえてノートに書き残す必要があるのか。その大きな理由は、私たちの生活が「ネット社会」になったことにあります。
昔は、通帳は家にあり、重要な書類も決まった場所に保管されていました。家族が見れば、ある程度状況が把握できたのです。
しかし、今は違います。
- ネット銀行や証券口座
紙の通帳がなく、本人のスマホやPCの中にしか情報がない。 - 膨大なアカウントとパスワード
各種サービスやSNS、サブスクリプションの数々。
これらはすべて、「本人しか把握していない」ケースがほとんどです。
「お互い知らない」のが、夫婦や親子の現実
私自身、自分の状況を振り返ってみると驚きます。大量のアカウントを持っていて、一応自分なりにまとめてはいますが、それを奥さんは全く知りません。
私はまだ「終活」という年齢ではありませんが、もし今、自分に突然何かが起きたら、残された奥さんは間違いなく困るでしょう。
そして、これは「お互い様」でもあります。
私自身も、奥さんがメインで使っている銀行くらいは把握していますが、細かい運用状況や、どんなオンラインサービスを使っているかまでは、正直あまりわかっていません。
お互いに元気で普通に暮らしているからこそ、相手の情報は「本人にしかわからない状態」になっているのです。
自分の親のこととなれば、なおさら知りません。
投資信託をしていると聞いたことはありますが、実際にはいくつ口座があって、それぞれどう運用されているのか、正確なことは全くわかりません。
また、親しい友人は誰なのか、その連絡先すら全く知らないのです。
もし今、親に何かあったら、情報を探すだけでかなりの時間を浪費してしまいそうです。
誰に連絡すればいいのかもわからず、手続きを進めるにしても、相当な苦労をすることになる……そんな光景が目に浮かびます。
スマホを見られたくないからこそ、ノートに書く
もっと言えば今の時代、スマホの中身なんて誰にも見られたくないのが本音ではないでしょうか。
たとえ家族であっても、プライベートが詰まったスマホを隅々まで覗かれるのは、亡くなった後であっても抵抗があるものです。
だからこそ、エンディングノートが活躍するのだと私は思っています。
「スマホを無理に開かなくても、このノートを見れば必要なことは全部わかるよ」という状態にしておく。
それは、家族を助けるためであると同時に、自分の「見られたくないプライバシー」を守ることにも繋がるからです。
エンディングノートがあるだけで、家族は救われる
「ここに書いてあるよ」その一言が、大きな支えになる
もし親が、 「大事なことは、このノートに書いてあるからね」 と一言伝えてくれていたら。
それだけで、家族はどれほど安心できるだろうと思います。
万が一の病気で入院したり、自分自身の意思を伝えるのが難しくなったりしたとき。
何をどうすればいいのか、何がどこにあるのか。
暗闇の中で手探りで進むのではなく、本人が残してくれた地図を見ながら進めることができる。
スマホのロック解除に四苦八苦したり、ましてや中身を覗き見て後ろめたい思いをしたりする必要もありません。
これは実務的な助けになるだけでなく、家族にとって大きな「心の支え」にもなります。
もしノートがなければ、家族はかなりの時間を浪費することになります。
存在すら確証のない口座を探して何十もの窓口に問い合わせたり、本人に代わって難しい判断を迫られたり……。
そんな苦労をさせないで済むというだけで、それは家族への何よりの思いやりになるはずです。
「本人の意思」を尊重してあげたいから
また、手続きが楽になるという実務的な意味以上に大きいのは、「本人がどうしたかったのか」がわかることです。
親の介護や入院、その後のことについて、私たちは「本人は本当はどうしたかったんだろう?」と迷う場面が必ず出てきます。
「できるだけ親の意思を反映した行動をしてあげたい」 そう思うのが家族の自然な気持ちですが、本人の考えを知る術がなければ、結局は自分たちの推測で決めていくしかありません。
そして、その決断にずっと不安を感じてしまうこともあります。
そんな時、ノートに本人の言葉で「こうしてほしい」「これは嫌だ」と書いてあれば、家族は迷わずに判断することができます。
それは単なる情報のメモではなく、「私がこう決めたことだから、自信を持って進めていいよ」と家族の背中を押してあげることにもなるのだと思います。
エンディングノートは、家族のためであり、自分のためでもある
エンディングノートは、家族の負担を減らすためのものです。ですが同時に、今の自分自身のためのものでもあります。
情報を整理することで、以下のことが見えてきます。
- 使っていない不要な口座はないか
- 無駄なサブスクリプションの契約はないか
- 本当に大切にしたいものは何か
それは、「死ぬための準備」ではなく、これからの毎日をよりスッキリとした気持ちで、安心して過ごすための整理です。
また、ノートを書き始めることで、家族と自然に話をするきっかけにもなります。
これからのことを、かしこまって無理に決める必要はありません。
「実はこのノートに、最低限のことはまとめてあるんだ」と伝えておくだけで、あなた自身の心のつっかえも取れるのではないでしょうか。
完璧なノートである必要はありません
エンディングノートと聞くと、何か立派なものを一冊仕上げなければいけない、と感じてしまうかもしれません。でも、決してそんな必要はありません。
市販の専用ノートでなくても、普通の大学ノートやルーズリーフ、あるいはデジタルのメモでも構いません。
例えば、まずは以下の4点だけでも書いておけば、それだけで価値は十分にあります。
- メインで使っている銀行名
- 加入している保険の有無
- いざという時の大事な連絡先
- スマートフォンやPCの情報のありか(パスワードの保管場所など)
一度にすべてを書き切る必要もありません。
大切なのは、完璧に仕上げることではなく、「現状の整理を、少しずつ始めてみること」だと思います。
元気な今だからこそ、落ち着いて自分のペースで進めることができるのです。
【まとめ】
エンディングノートは、決して「終わりの準備」ではありません。
それは、 今の自分の状況を整理し、これからの毎日を安心して過ごすためのもの。 そして同時に、 家族が迷わずに進むための、大切な道しるべ。です。
「終活」や「エンディング」という言葉に抵抗があったとしても、「大切な人を困らせないための整理」と考えれば、少し前向きに捉えられるのではないでしょうか。
元気な今だからこそ、できることがあります。
まずは、ノートを一冊用意して、思いつくことから一歩踏み出してみる。
それはきっと、あなたにとっても、あなたの大切な家族にとっても、未来の安心につながる大きな第一歩になるはずです。
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