「終活、そろそろ考えた方がいいのかもしれない」
ふとした瞬間にそう頭をよぎることはあっても、実際に具体的な一歩を踏み出すのは、なかなか難しいものです。
しかし、気力も体力もあり、自分の意思で物事を決められる60代だからこそ、終活を始めるにはちょうどいい時期でもあります。
この記事では、60代から終活を始める意味と、家や庭、お金のことなど、元気なうちに考えておきたいことを紹介します。
- 60代から終活を始める意味と、元気なうちに取り組むメリット
- 家や庭、お金、お墓など、最初に考えておきたいこと
- 家族に負担を残さないための情報整理と、希望の伝え方
- すべてを一度に進めず、自分のペースで終活を始める方法
「終活なんて、まだ早い」そう思っていませんか?
「最近よく『終活』って耳にするけれど、私にはまだ関係ないことだ」
「病気もしていないし、毎日元気に過ごしている。今から死ぬ準備なんて、なんだか縁起でもない」
そう思われるのは、ごく自然なことです。
仕事の責任から解放され、あるいはお孫さんとの時間が増えるなど、自分の時間をゆったりと楽しめるようになった「第二の人生」の真っ只中。
これからの毎日をどう謳歌しようかと前を向いている時に、わざわざ「終わりのこと」を考えるなんて、少し寂しい気がしてしまいますよね。
でも、ふとした瞬間に、こんな風に感じることはありませんか?
- 「そのうち階段を上がれなくなったら、暮らしはどうなるんだろう」
- 「今は楽しみな庭の手入れも、いつまでこの体力が続くかな」
- 「遠くにあるあのお墓、将来は誰が守っていくんだろう」
こうした不安を感じることは、けっして「老い」による弱気ではありません。
むしろ、これまでの人生を大切に守ってきたからこそ、「これからの安心」を真剣に考えている証拠です。
そんな心の隅にある小さな不安に、余裕があるうちに向き合ってみる。それこそが、終活の第一歩なんだと思います。
終活は「死の準備」ではありません
そもそも、終活という言葉に抵抗を感じるのは、それが「人生を畳むための作業」だと思われているからです。
一般的な定義では「人生の終焉をより良く迎えるための準備」なんて言われますが、実際に実家の終活を間近で見てきた私は、少し違う考えを持っています。
終活とは、「これからの人生を、もっと身軽に、もっと安心して楽しむための整え術」です。
何かあった時のためだけではなく、「今を安心して暮らすため」に行うもの。
背負っている荷物を一度下ろして、中身を確認し、これからの自分に必要なものだけを選び直す。
そうして不安の種を一つずつ摘んでいけば、今よりもっと毎日を穏やかに過ごせるようになるはずです。
終活って、具体的に何をするの?
「そうは言っても、何から手を付ければいいの?」と迷う方へ。
まずは、以下のことを少しずつ、自分のペースで考えてみるのがおすすめです。
① 家や庭のことを考えてみる
家は、長く住めば住むほど愛着が湧くものですが、同時に維持するパワーも必要になります。
今はご自身でできていても、10年後、20年後はどうでしょうか?
- 「このままこの家に住み続けるのか」
- 「庭木の剪定はいつまで自分でできるのか」
- 「自分で管理できなくなったときどうするのか」
これらを一度立ち止まって「考えること」自体が、立派な終活です。
例えば、庭木の手入れ。私の父は将来の負担を考えて、50万円を使って自ら庭を整えました。
当初、その計画を聞いたとき、「先のことまでちゃんと考えてくれているんだな」と感じました。
ただ、実際に進める過程では、家族の間で
「そこまでしなくても…」
「いや、今のうちにやらないと」
といった温度差が生まれ、ぎくしゃくしてしまったこともあります。
でも、その葛藤も含めて「これから」を話し合えたことは、決して無駄ではなかったと思っています。
大切なのは、今すぐ完璧に作り変えることではなく、今のうちに向き合っておくこと。
それが、未来のあなたと家族の選択肢を広げてくれるはずです。
参考記事
→実家の庭じまい、自分でやる前に。親子で話しておきたい「これから」のこと
② お金や大事な情報の整理をする
銀行口座や保険、現在契約している月額サービス(サブスクリプション)などは、本人以外には意外と見えにくいものです。
特に近年では、通帳のないネット銀行、スマホの中だけで完結するネット証券、デジタル資産などが増えており、家族が情報を探すのは至難の業です。
まずは、次のようなものが「どこにあるのか」「何を契約しているのか」を自分自身が把握できる状態にしておきましょう。
- 銀行口座・証券口座
- 生命保険・医療保険などの保険
- クレジットカード
- 携帯電話やインターネットなどの月額サービス
- 不動産や車などの大きな資産
- ネット上で管理している資産や契約など、紙の書類だけでは把握しにくい情報
すべての情報を一つのノートに細かく書き込む必要はありません。大切なのは、必要な情報がどこにあるのか、家族が分かるようにしておくことです。
- 通帳や保険証券を保管している場所
- 契約内容や必要な情報を確認できる書類の場所
- スマートフォンやネット上の資産について、確認するための手がかり
こうしたことを簡単に書き残しておくだけでも、家族が必要な情報を探す負担を減らせます。
③ お墓のことを考えてみる
お墓の問題は、終活の中でも特に重たく感じる部分かもしれません。
「先祖代々」という言葉が頭をよぎり、なかなか切り出せない方も多いでしょう。
でも、だからこそ元気なうちに一度だけ、やわらかく考えてみてほしいのです。
- 継ぐ人はいるのか?
- 子供は近くに住んでいるか、負担にならないか?
今は「永代供養」という、お寺や霊園に管理をお任せする選択肢も一般的になっています。
私の親も、「子供に重荷を背負わせたくない」と墓じまいを選びました。
それは伝統を捨てることではなく、新しい形で家族の絆を守るための、前向きな決断でした。
参考記事
→子どもにお墓の負担を残したくない。墓じまいと永代供養を選んだ親を、子世代の私はこう感じた
④ 自分の「意思」の輪郭を残す
もしものとき、家族が最も困るのは「どうしてほしかったのかが分からない」ことです。
親からは「自分の好きに決めていいからね」と言われていたとしても、実際にはなかなか割り切れないものです。
親の希望が分からないと、家族は「これでよかったのだろうか」と迷ってしまうことがあります。
できるだけ本人の意向を尊重したいと思うからこそ、自分たちだけで決めることに難しさを感じます。
- 「葬儀は身内だけで静かに行ってほしい」
- 「思い出の品は、これだけ残しておいてほしい」
- 「このコレクションは処分して構わない」
ほかにも、家族が判断に迷いそうなことを書き残しておくのもよいでしょう。
- 延命治療についてどう考えているか
- 介護が必要になったらどこで暮らしたいか
- ペットをどうしてほしいか
ただし、すべてを今の段階で細かく決める必要はありません。大切なのは、家族に任せることと、自分の希望として伝えておきたいことを分けて考えることです。
こうした「判断のヒント」が少しあるだけで、家族の迷いは驚くほど少なくなります。家族がその時の状況に合わせて判断できる「余白」を残しておくことも大切です。
大切なのは、「こうしてほしい」という意思の輪郭を伝えておくこと。
エンディングノートなどを活用し、思いついた時にメモを残しておきましょう。(自分に何かあった時、家族が困らないために|エンディングノートに残しておきたい5つのこと)も参考にしながら、形式にこだわらずに「自分の考えを書き留める」ことから始めてみてください。
60代の終活は「自分が困らないための準備」
60代の終活を成功させるコツは、完璧を目指さないことです。
そのくらいの気軽な気持ちで始めるのが、ちょうど良い塩梅です。
自分が把握しやすいように情報を整理し、管理しやすい量まで物を減らす。その延長線上に、結果として「家族の負担が減る」というメリットがついてきます。
最初から子供世代への配慮ばかりを優先すると、かえって負担が大きくなってしまいます。まずは自分自身の安心のために、環境を整えていきましょう。
そして、60代の今だからこそ考えておきたいのが、「今は自分でできていることが、この先もずっとできるとは限らない」ということです。
今は自分で管理できているお金や契約、手入れできている家や庭、何気なく使っているたくさんの物も、年齢を重ねれば負担になることがあります。
だからこそ、まだ元気で自分の意思で決められる今のうちに、「これからも自分で続けたいこと」と「少しずつ手放してもいいこと」を考えておく。
これも60代から始める終活の大切な一歩です。
まとめ:元気な「今」が、最高のスタートライン
終活は、いつからでも始めることができます。
しかし、「元気なうちに始めること」には、何にも代えがたい価値があります。
体力があり、判断力がはっきりしている今の状態なら、自分の大切なものを自分の意思で選別し、納得のいく形で整理することができます。
体調を崩してからでは、自分の希望を伝えること自体が大きな負担になり、妥協せざるを得ない場面も出てくるかもしれません。
終活は、誰かのためだけに行う「義務」ではありません。「自分自身が、これからの人生をより軽やかに、安心して過ごすための準備」です。
何か大きなことを成し遂げようとしなくて大丈夫です。まずは、気になる書類を一通整理する、使っていないコップを一つ手放す、といった小さな一歩から始めてみませんか。
その積み重ねが、あなた自身のこれからの安心を作り、大切な家族の負担を減らすことにもつながっていきます。
