親が施設に入ったあと、実家を放置しないために考えたいこと

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親が介護施設へ入所することになったとき、多くの家族が直面するのが「誰も住まなくなった実家をどうするか」という問題です。

すぐに売却や荷物の処分を決める必要はありません。親にとって今でも大切な場所であり、家族にとっても思い出が詰まった家だからです。

しかし、人が住まなくなった家を長期間放置すると、庭木の荒れや建物の老朽化、防犯面のリスクなど、管理の手間やトラブルが確実に増えていきます。

だからこそ、親が施設に入ったあとに大切なのは、「すぐに売却・処分すること」でも「そのまま放置すること」でもありません。

まず考えたいのは、「これから誰がこの家を管理するのか」ということです。

この記事では、親が施設に入ったあと、実家を「放置しないために」何を考え、どんな準備をしておくとよいのかを、実体験を交えながらお伝えします。

【この記事で分かること】

  • 親が施設に入ったあと、まず何を考えればいいのか
  • 実家を放置しないために、誰がどんな管理をするのか
  • 親が元気なうちからできる準備
  • 家族だけで管理するのが難しいときの選択肢
目次

親が施設に入ると、実家は「放置」のリスクにさらされる

親が施設へ入所すると、実家を取り巻く状況は大きく変わります。これまで当たり前のように明かりが灯っていた家から、毎日人が暮らす気配が消えてしまうからです。

ここで認識しておきたいのは、施設入居に伴う実家の片付けは、親が亡くなった後の「遺品整理」とは根本的に異なるという点です。

親は新しい場所で生活を続けており、実家という資産も、そこに残された家財道具もすべて親の所有物です。

そのため、「誰も住んでいないから」という理由だけで、子供の判断で勝手に片付けや処分を進めることはできません。

物だけでなく「親の気持ち」に寄り添う難しさ

実家には、長年使い込んできた家具や衣類、アルバム、趣味の道具など、膨大なモノが残されています。

子供の目から見れば「使っていない不要なもの」に映ったとしても、親にとっては人生の軌跡であり、大切な思い出の一部です。

親が施設に移ってその場にいないからこそ、家族は「これを捨てたら嫌がるだろうか」「これは残しておくべきだろうか」と、常に親の気持ちを推測しながら作業をすることになります。

本人の意向を直接確認できない状態での片付けは、一つひとつの判断に迷いが生じ、時間的な負担だけでなく、想像以上の精神的エネルギーを消耗するものです。

実家の片付けが難しい理由は、単に物の量が多いからだけではなく、こうした親への敬意や、「本人がいない中でどこまで手をつけていいのか」という迷いが生じる点にあるのです。

人が住まなくなった家は少しずつ変化していく

私の祖父が施設に入ることになったときのお話です。

当時、親戚みんなが一番心配していたのは、祖父が施設で安心して過ごせるかどうか、寂しい思いをしていないかという点でした。

家族として本人の身の回りを心配するのは当然のことであり、残された家がその後どうなっていくかまで、深く想像が及んでいませんでした。

そんなある日、父から聞いた言葉が強く印象に残っています。「今年は、じいちゃんの家のミカンがほとんど実らなかった」

祖父の家の庭には、毎年たくさんの実をつける立派なミカンの木がありました。毎年楽しみにしていたその木が、祖父がいなくなった年は、数えるほどしか実をつけなかったそうです。

私はその話を聞いて初めて、「家や庭は、手入れをする人がいなくなると、こんなにも早く影響が出るものなんだな」と実感しました。

そこに住む人がいなくなることにより、以下のような小さな変化が確実に始まります。

  • 庭の手入れをする人がいなくなることで、草木が荒れる
  • 窓を開けて空気の入れ替えをする機会が減り、湿気がこもる
  • 日常的な掃除や、軽微な不具合の修繕が止まる

こうした小さな変化の積み重ねが、家全体の活力を失わせ、老朽化を加速させていきます。

住居というものは、そこに人が住み、手をかけることで初めて健全な状態が保たれているのです。

すぐに売却・片付けをしなくてもいいが「放置」は禁物

親が施設に入ったからといって、焦って売却を決めたり、無理に片付けを完遂させたりする必要はありません。

むしろ、親も子供も気持ちの整理がついていない段階で無理に進めると、家族間での大きなトラブルや、親の孤立感を深める原因になりかねません。

「親がまだ健在なのに、実家を勝手に処分するのは親不孝な気がする」と感じるのは、ごく自然な感情です。

しかし、「そのまま何もしないで放置する」ということだけは避けなければなりません。

実家を長期間、無人の状態で維持するためには、相応の維持管理の手間が発生するからです。

具体的には、以下のような管理業務が必要になります。

1. 郵便物・配布物の確認

ポストにチラシや新聞が溜まったままになると、一目で「空き家」であることが不審者に伝わってしまい、空き巣や放火などの防犯上のリスクが跳ね上がります。

2. 室内の定期的な換気・通水

長期間、窓を閉め切ったままにするとカビが繁殖し、建物の木材を傷めます。また、水道を長期間使わないと、配管内の水(封水)が蒸発して下水の臭気や害虫が室内に上がってくる原因になります。

3. 庭木や雑草の手入れ

敷地内の雑草や庭木が隣の家まで伸び放題になると、近隣住民への多大な迷惑となり、苦情の原因になります。また、害虫の発生源にもなりかねません。

4. 防犯対策と建物の点検

施錠の確認はもちろんのこと、台風や大雨のあとに瓦がズレていないか、窓ガラスが割れていないかなどの外観チェックが不可欠です。

このように、人が暮らしているときには無意識に行われていた維持活動が、無人になった瞬間にすべて「家族のタスク」として重くのしかかってきます。

【関連記事】 実家を空き家にする前にやるべきこと7選|放置で起こるリスクと対策

放置しないために、まず考えたいのは「だれが管理するか」

親が施設に入ったあと、多くのご家族は「この家を売るべきか、残すべきか」という最終的な結論を急いでしまいがちです。ただ、家の処分は簡単ではなく、親の意思を確認できるかどうかといった点も関わってきます。

そのため、まず最初に決めるべきなのは、家の処分方法ではなく「これから誰がこの家を維持・管理していくのか」という体制づくりです。

多くの家庭において、すぐに完璧な答えを出すのは難しいのが現実です。

  • 兄弟姉妹がそれぞれ遠方に暮らしている
  • 自身の仕事や育児が忙しく、実家へ通う時間が取れない
  • 管理にかかる交通費や維持費の負担を誰が持つのか決まっていない

だからこそ、まずは家族間で現状を共有し、以下の点を話し合っておくことが大切です。

  • 誰が、どのくらいの頻度で様子を見に行くのか
  • 庭木の伐採や最低限の換気など、どこまでの管理を役割分担するのか
  • 将来的に、この家をどうしていきたいか(賃貸、売却、解体など)の緩やかな方向性

今すぐ白黒はっきりと決断を下す必要はありません。

「ひとまず次の春までは、兄弟で交代しながら現状維持に努めよう」といった、期間限定の方向性を共有しておくだけでも、将来的な心理的・肉体的負担は大きく軽減されます。

放置を防ぐために、元気なうちからできること

施設に入ったあとの管理を楽にするためにも、親が元気なうちからできる準備があります。

私の現在の実家では、父が元気なうちに庭の整理を計画的に進めていました。父が口にしていたのは、「自分たちが動けなくなったとき、子供たちに管理の負担を残したくない」という言葉でした。

庭木は、植えた当初は四季折々の変化を楽しませてくれる素晴らしい存在です。

しかし、年月が経ち木が大きく成長すると、毎年の剪定や落ち葉の掃除、害虫駆除など、維持するための負担が増大します。

子供が実家の近くに住み続けるとは限りません。

それぞれの生活や仕事がある中で、実家の庭の手入れだけのために時間を割くことは、決して容易ではないのです。

父が行った庭木の伐採や整理は、単なる片付けではなく、将来の家族に向けた「思いやりの準備」であったのだと、今振り返って強く感じます。

  • 祖父の家で経験した、人がいなくなった後の急激な家の変化
  • 実家で父が進めた、変化が起きる前の自主的な準備

この二つの出来事を通して私が学んだのは、実家の問題を考える上で重要なのは、単に「古い家をどう処分するか」という表面的な話だけではないということです。

大切なのは、家族が築いてきた資産とこれからの生活を、「いかに負担を少なく、次の世代へ引き継いでいくか」という視点を持つことです。

父が実際にどのように庭を整理したのか、その経緯や費用については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
→実家の庭じまい、自分でやる前に。親子で話しておきたい「これから」のこと

すべてを家族だけで抱え込まないための選択肢

実家の管理や片付けを意識し始めたとき、それらすべてを家族の力だけでやり切ろうとする必要はありません。

長年暮らしてきた家であればあるほど物の量は想像以上に多く、いざ作業を始めると、体力的・精神的な疲労から作業が停滞してしまうことも珍しくありません。

「家族の持ち物だから、自分たちの手で整理しなければならない」と考えを縛ってしまうほど、心理的な負担は大きくなり、兄弟間での押し付け合いや体調不良を招く原因になります。

このような場合、プロの片付け業者や空き家管理サービスなどの民間サービスを依頼することも、非常に有効な選択肢です。

専門の業者であれば、貴重品や思い出の品を適切に仕分けしながら、迅速に作業を進めてくれます。

また、遠方に住んでいて通えない場合は、月に1回程度、空き家の巡回・換気を行ってくれる代行サービスを利用するのも手です。

大切なのは、無理をして自分たちだけで解決しようと焦ることではなく、どのような外部サービスがあるのかという情報を事前に集め、費用と手間のバランスを見極めた上で、家族にとって最適な判断を下すことです。

【関連記事】 実家の片付け、業者に頼むべき?自分たちでやるか迷ったときの判断基準

まとめ:実家を放置しないために、家族で考えたいこと

親が施設に入ったあと、実家をどうするかという問題は、どの家庭でも避けて通れない現実です。しかし、それは「今すぐ売却しなければならない」ということではありません。

大切なのは、実家を放置しないために、まず「誰がどう管理していくか」を考えることです。

親がその家に込めてきた想い、家族の生活状況、空き家を維持するための現実的な力。これらのバランスを見ながら、時間をかけて進めていくべき事柄です。

最初に問いかけるべきは「この家をどう処分するか」ではなく、「この家を、家族みんなでどう見守っていくか」

親が施設に入った直後は慌ただしくても、まずは家族で声を掛け合い、実家のあり方を少しずつ考えてみてはいかがでしょうか。

【こちらの記事もあわせてどうぞ】

実家の片付けの費用相場はいくら?内訳と後悔しない業者選びのコツ

この記事を書いた人【たつみち】
実家の片付けをきっかけに、家族がすれ違う難しさを身近で感じてきました。「和やかに、安心して」片付けを進められるように、子世代の視点から必要な情報をお届けします。
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